頭痛の有病率は「緊張型頭痛」22.4%、「片頭痛」8.4%と、国民の4人に1人が頭痛に悩んでいる状況ですが、なかでも女性の有病率は男性の約3倍であり思春期以降中高年に至るまでの頭痛が最もひどいことを考えると、子育てママさん世代には頭痛でお悩みの方も大変多いと思われます。

「緊張型頭痛」とは30分から7日間続く、両側のこめかみを圧迫されるような痛みで、程度は軽度から中等度の頭痛です。治療にはストレッチや鎮痛薬を用います。

一方、「片頭痛」は中等度から重度で生活支障度が高い頭痛です。4~72時間続き、体を動すことによる増悪を伴う拍動性頭痛があり、嘔気、嘔吐、光過敏、音過敏を伴いやすい特徴があります。簡単に言うと、静かで暗い部屋でじっとしていたい頭痛と言えます。女性ホルモンとの関連があり、初潮を迎える小学校高学年から40歳くらいまでの間に発症します。

片頭痛の治療としては①痛い時に飲む急性期治療と②発作頻度を下げる予防療法があります。

①急性期治療には鎮痛薬(アセトアミノフェンなど)、トリプタン、ジタンを用います。
②予防療法には内服薬のほか、2021年からは月1回の皮下注射の抗CGRP抗体を使用しており、片頭痛治療も大きく変化しています。

ここで気を付けていただきたいことは、鎮痛薬の使い過ぎです。どの頭痛にも共通して言える事ですが、例えば市販の鎮痛薬を3か月以上、月10日以上内服している場合は「薬剤の使用過多による頭痛」という痛みに敏感な状態になっています。いったんこのような状態になりますと、頭痛は慢性化して自力で元に戻すのは難しく、②の予防療法が必要になるため、ぜひ病院を受診していただきたいと思います。

また、20歳から40歳代は妊娠可能年齢であり、薬と妊娠、授乳に関してご心配なことも多いと思います。一般的に妊娠期間中の片頭痛は減りますが、過半数の方が出産後1か月以内に頭痛が再発しています。妊娠中、授乳期共に鎮痛薬の第一選択薬はアセトアミノフェンですが、この期間の薬剤選択については特にデリケートな問題なため、医療機関での相談をお勧めします。

このように、頭痛についてお悩みの方は多いと想定されるのですが、病院受診率が低いこともわかっており、片頭痛症状をもつ人の42.6%が医療機関を一度も受診していないという調査結果があります。日常的に頭痛があっても我慢することが当たり前になっているかもしれません。また、頭痛くらいで病院に受診できない、時間的に余裕もない、市販薬を飲んでなんとかする、とお考えの方も多いと思います。しかし、頭痛のために家事、育児や仕事に支障がある場合は、ご相談いただくことで改善の糸口をお探しできるかもしれません。当院では日本頭痛学会認定専門医による頭痛外来を設置しております。是非お気軽にご相談ください。

今回の先生

福井赤十字病院 脳神経内科部長
(日本頭痛学会頭痛専門医・指導医)
早瀬 史子先生

日本赤十字社
福井赤十字病院

福井市月見2丁目4番1号

TEL.0776-36-3630(代)

FAX.0776-36-4133

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