出産、育児、進学、就職…新しい生活は、期待と同時にストレスもいっぱいで、頭痛に悩まされている方も多いのではないでしょうか。片頭痛は全人口の8.4%、男女別にみると男性は3.6%、女性は12.9%と、女性に多い疾患ですが、その影響は軽視されがちです。実際、日本では片頭痛症状をもつ人の42.6%が医療機関を一度も受診していないという調査結果があります。これは、片頭痛を「我慢すべきもの」や「市販薬で対処できるもの」と考えているためかもしれません。

しかし、片頭痛は適切な治療を受けることで、生活の質を大きく改善できる疾患です。特に以下のような場合は、医療機関への受診をお勧めします。

①頭痛で仕事や学校を休む、遅刻・早退するなど、日常生活に支障がある
②週に1回以上、頭痛で市販薬を飲んでいる
③鎮痛薬の効果が弱くなった、使用回数が増えた

片頭痛の有病率は20歳から40歳代の女性に多く、まさに働き盛りや学業に励む時期と重なります。この年代は頭痛を我慢して仕事や学業を続けようとする傾向がありますが、それが逆効果になることもあります。適切な治療を受けることで、「仕事や学業のパフォーマンス向上」「欠勤・欠席の減少」「生活の質の改善」などのメリットが期待できます。

普段の診療でも、学生さん、特に高校生や大学生で片頭痛に悩んでいる人が多いと感じています。症状が慢性化する前に治療を受けることで、「授業や試験、就職活動などに集中できる」「部活動、サークル活動や友人との交流を楽しめる」など、より前向きな気持ちになれるかもしれません。

実際に、頭痛外来に来られている患者さんの中には、「痛くなったらどうしようと考えて出かけられなかった旅行に行くことができた」「肌身離さず持っていた鎮痛薬を持たずに出かけられるようになった」など、片頭痛に振り回されていた生活から解放された方もいらっしゃいます。日頃大変悩んでいた患者さんからこんな言葉をお聞き出来ると、私もとてもうれしい気持ちになります。

片頭痛でお悩みの方に頭痛外来に気軽に来院していただきたいのですが、忙しくて受診できない方のためにセルフケアのヒントをまとめてみました。

①規則正しい生活リズム
適切な睡眠時間の確保(睡眠不足・寝過ぎはNG)
②食生活の改善
空腹を避ける、赤ワイン・チーズ・チョコレートの過剰摂取を避ける(チラミンという片頭痛を誘発する物質が含まれているため、誘因となる可能性があります)
③ストレス管理
適度な運動・首や肩のストレッチ(頭痛時は避けて)
④環境調整
強い光を避ける(サングラス・帽子・日傘)・騒音や強い匂いを避ける
⑤頭痛ダイアリーの活用
頭痛の誘因やパターンを把握する(診察時に見せていただくと、月経や天気など誘因の特定にもつながり診療の大きな補助になります)

適切な治療とセルフケアで、頭痛に悩まされない、自分らしい輝きに満ちた毎日を送りましょう!私たちは、いつもみなさんを応援しています。

今回の先生

福井赤十字病院 脳神経内科部長
(日本頭痛学会頭痛専門医・指導医)
早瀬 史子先生

日本赤十字社
福井赤十字病院

福井市月見2丁目4番1号

TEL.0776-36-3630(代)

FAX.0776-36-4133

※診療時間など詳しくはホームページをご覧ください。